H生活関連・科学

判決理由・内容
 カレー事件について、判決は「カレー鍋に亜ヒ酸を混入させる機会は、被告が見張りをしていた事件当日の午後0時20分から40分間に限られ、その間に1人でいた時間帯がある」などと指摘し、「被告が鍋のふたを開け、不自然な動きをしていた」という住民の目撃証言の信用性を認め、「1審の事実認定に誤りはない」と判断した。また、「見張りは二女とずっと一緒で1人になったことはなかった」などと主張した被告の法廷供述については、「自分の都合のいいように事実の前後関係を意図的に操作したり、事実そのものをねつ造したりした結果」と退けた。
 さらに、「被告は亜ヒ酸の猛毒性を知り尽くしている」として1審判決の「未必の殺意」を維持した。一方、動機については「近所の主婦から疎外されたことによる腹立ちまぎれと考えることが最も自然だが、被告が真実を語ろうとしない状況では、具体的な動機は不明というほかない」と述べるにとどまった。
 また、夫と知人男性(42)に対する亜ヒ酸使用の3件の殺人未遂事件は、未必の殺意を認定。夫に対する確定的殺意を認めた1審判決は誤りとしたが、「保険金目当ての自作自演」との弁護側の無罪主張を退けた。被告の主張に沿った夫の証言については「弁護人から被告の公判調書の差し入れを受け、その内容に合った供述をしていることが明らか」と信用性を否定した。
 そのうえで判決は、カレー事件について、被告が殺人未遂事件などで亜ヒ酸を使った経験から「食べ物に亜ヒ酸を混入しても、決して発覚しないとの前提で敢行された」と結論。